武満徹 コンサートに向けて

始めて歌う武満徹のソングス。

空に浮かぶ雲や木々の葉に降りそそぐまばゆい光のように、自由で捕らわれない構築されることのない音楽、武満徹の音楽には計り知れないほどのエネルギーを感じる。

そして、なぜだろう、歌っていると何か心の奥深くにある琴線に触れ、どうしようもなくその音楽に感動し涙が出てくる。それも全く突然に心が揺さぶられて眩暈がするようだ。今までどんなに好きな歌を歌ってもそのような経験をしたことはない。

 優しいメロディーですぐにも口ずさんでしまうようなそんなメロディ−なのに、やはり武満徹の音楽はそんな簡単にはいかない。どうしてこの展開になるのだろう、なぜここでこの音かしら?リズムかしら・・・?とそんなことを多く感じるのだ。

 そして、ピアノ曲に至っては、武満サウンド、マイナーの和音の上にメジャーの和音が重なり、雨の素描、雲、微風、と、それらそのものの音、そのものより本質に迫る音楽が鳴り響く。

「人が生きていく上での祈り、希望、愛、自然や命との関わり、、、計り知れない何か、神といってもいいかもしれない、結局、愛・・・。」音楽で表現したいのは愛だと話す武満徹の表情はなんとも優しく神々しい。

 武満が自分で書いた譜面は完璧に存在せず、ソングスなどはメロディーは書いてあるけれどコード進行が記載されていない楽譜も多く、沢山のミュージシャンが演奏しているけれど、実のところどういうアレンジで演奏したらいいのか悩んでしまう。

 

 音にはひとつとして同じ音はない。西洋の楽器は、簡単に同じ音が鳴ってしまうので、これは困ったものだと思うと話す武満徹。そうたしかに自然界に同じ音はなく、人の声も同じ。自然界の音はどの音もお互いを邪魔したり干渉しあうことはなく、共存している。そんなことを「ノヴェンバー・ステップス」で表現したかったとも話している。

琵琶と尺八、その後ろにオーケストラのサウンドが鳴る。森の風のように。

 今度のコンサートでは、ピアノと歌とのデュエット。さて、お聴きになる方はどんな印象を持たれるのか。武満徹は音楽も人柄も知れば知るほど好きになっていく崇高で純粋な音楽家。

Duo Image songs の私たちの演奏で、それぞれ聴く人の心に触れる何かを表現する事ができたらどんなに幸せだろうかしらと思う。

写真はお庭のお花。薔薇がよく咲いています。



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