時空を旅して
いつのまにか見知らぬ街を歩いていた。
どうして自分がここを歩いているのか、不思議な気持ちでいる。
空白の時間があり、この街に来る前の記憶をなくしているのだ。
誰かにこの街の名前を聞きたいのだが、人の姿が見当たらず、物音もしない。
寂しい街。
しばらく街を歩きながら、ある家を訪ねなくてはいけないと思っている。
しかし、その家の人に用事があるはずなのだが、そこに住む人は誰だったか思いだせない。
見知らぬ街のはずなのに、なぜかその家に辿り着いた。
大きな西洋風の家で、庭にはプールがあり、数人の人が楽しそうに遊んでいる。
その家の主人は男性で、その人に会っても顔に見覚えがない。
でも、私はとても大切な要件を伝えなくてはならないのだ。それは果たしてなんだったのだろう。
その家の主人は、私が訪ねたことに迷惑そうである。今まで楽しそうに遊んでいた人々からも露骨に嫌な顔をされた。
要件が思い出せないまま、その家の居間に座っていた。
広く快適な居間で、白いソファーは座り心地も素晴らしい。
私は出された珈琲をのみながら、ボンヤリと庭を眺めて、一体私はここで何をしているのだろうかと思っていた。
しかし、ここにいても何もならず、不穏な雰囲気に危険も感じてきたので、その家から離れることにした。
また街を歩いている。
しばらくすると、大きな遊園地に行き着いた。
私は遊園地の中に入り、人混みの中を歩いた。皆楽しそうに、メリーゴーランドやコーヒーカップ、ジェットコースターに乗っている。
誰かにこの街の名前を聞きたいのだが、なかなか話しかける事ができないでいる。
しばらく歩くと、公園のはずれの方に川があることに気がついた。
私はその川に向かって歩きだす。
深くえぐられた土地の下を川が流れている。川までは数十メートルは下らなくてはならないようだ。
私は覗き込むようにしてその川を眺めた。
川底まで見通せるような透明感で、とても美しい川だった。
ゆったりと穏やかに流れる川。数人の人が泳いでいる。
何て気持ち良さそうなのだろう。綺麗な川だなぁ。
川まで下るのは大変そうだけれど、どうにかして泳ぎたい。
泳ぎたいという気持ちは、強い願望となった。
透き通った水は心を癒やす。
私は、その川を見た瞬間から強い幸福感を感じていた。
静かで優しい心になり、それまでの不安や違和感は全て消えてしまった。
自分の居場所でないところで生きていて、ようやく自分の居場所を見つけたということか。
果たして夢の中の私は、どこの時空で生きているのかしらと思ったりする。
時空を越えて、違う自分が存在するという説もあると聞いたことがある。
その説から、今いる時空と違う時空は交差することもあるそうだ。
想像すると、なんて楽しいこと!
日常の中でも不思議な体験をすることがある。
人智を越えたその何かに深く興味を持つ。
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